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植物系統学野外実習

日程: 2009年7月31日
時間:
場所: 伊豆大島
  • 日時: 09/7/31-8/6
  • 参加者:17名(男子13名、女子4名)
  • 担当教員:都市教養学部 理工学系 生命科学コース(植物系統分類学研究室)
  • 教授:村上哲明, 准教授 菅原 敬, 助教 加藤英寿,
  • ティーチングアシスタント:大槻 涼 (D2)、山本 薫 (M2)、中路真嘉 (M1)

理工学系生命科学コース3年性向けの系統学野外実習を傾斜配分の「特徴ある教育プログラム開発プロジェクト」の一環として、平成21年度は伊豆大島で行った。
 伊豆大島には、通常の有性生殖をするハチジョウベニシダと、それに近縁で無配生殖をするベニシダが共存している。無配生殖とは無性生殖の一型であり、親と遺伝的に全く同一の子孫ばかりを胞子を通して増やすような生殖様式である。本州には広く無配生殖型のベニシダが生育しており、有性生殖型のハチジョウベニシダは、きわめて限られた地域にしか見られない。伊豆大島は、この両生殖型のベニシダ類(ベニシダとハチジョウベニシダを合わせてベニシダ類と呼ぶことにする)が共存している稀な場所である。

 今回の野外実習では実習参加学生に、

  • (1)無配生殖型のベニシダと有性生殖型のハチジョウベニシダが伊豆大島内にどのように分布をしているか?
  • (2)ベニシダ類の両生殖型でその生育環境に違いが見られるか?

等を調査してもらった。このような調査・研究を通じて、植物系統分類学の実際の野外調査方法、植物の押し葉標本の作成方法、さらには標本を活用しての系統分類学的研究方法を体験・習得してもらうことが今回の野外実習の目的である。
 具体的な実習の内容としては、参加学生を3つの班に分け、各班に教員一人とTA一人が付き、伊豆大島を大きく3つに区分した上で手分けをして調査を行った。まず、班ごとに10以上の異なる集団から25個体程度のベニシダ類の胞子をつけた葉を採集した。採集した地点は、GPSを用いて記録してもらった。採集した葉は、大島海洋国際高校の生物実習室に持ち帰った後、新聞紙に挟んで押し葉標本とし、その押し葉標本を用いて各個体の生殖様式を推定した。無配生殖をするシダは、事実上、減数分裂をしないで胞子を形成するので、一つの胞子嚢(胞子の入った袋)の中に有性生殖をするシダ(64個の胞子が入っている)の半数の32個しか胞子が入っていない。そこで、採集したベニシダ類の胞子のついた葉ごとに、胞子嚢当たりの胞子数を実体顕微鏡下で計数することによって、各個体の生殖様式を推定する作業を実習生に実施してもらった。

 その結果、ベニシダ類の有性生殖型と無配生殖型が図1のように分布していることが分かった。これを見ると、無配生殖型のベニシダは伊豆大島内に広く分布しており、無配生殖型しか見られなかった集団も少ないこと、比較的新しい時代(といっても、200-300年前ではあるが)に溶岩が流れた地域に有性生殖型のハチジョウベニシダが多数分布していることなどが分かった。これらは、これまでに全く分かっていなかった新規の発見である。

 今回参加した学生のレポートに書かれていた感想を見ると、植物系統分類学の分野で研究者が実際に行っているのと全く同じ調査・研究を部分的にしろ、体験することができて本当に興味深かったようである。実習のためだけの調査をするよりも、本物の野外調査・研究の一部を体験できた方が野外実習としてはるかに有意義であったと感じてくれたようである。その意味で、この実習の狙いは十分達成されたと考えている。

伊豆大島でベニシダ類の調査方法についてTAから指導を受ける参加学生達。
伊豆大島のベニシダ類
実際に野外調査をする実習生
野外で採集してきたベニシダ類の押し葉標本を作成して、野冊(中央の竹製のもの)に挟み終わったところ。
大島海洋国際高校の生物実習室において、実体顕微鏡下で胞子嚢あたりの胞子数を計数することによってベニシダ類の生殖様式を推定しているところ。